データーセンター建設が相次いでいると聞き、「なぜ今これほど増えているのか」「どの会社が工事を担当し、投資先として注目できるのか」と気になっている方もいるでしょう。一般には「データセンター建設」と表記され、生成AIやクラウドサービスを支える重要な設備として需要が広がっています。
ただし、建設計画が増えれば、関連企業の利益や株価も必ず上がるわけではありません。建物を建てる会社だけでなく、電源や冷却設備を供給する会社にも商機がある一方、電力不足や工事費の上昇といった問題もあります。
国内の建設動向から立地条件、費用の考え方、関連銘柄の選び方まで、投資判断にも役立つ形で整理します。
データーセンター建設は今後も増える?需要が拡大する理由

データセンターの新設・増設は、2026年時点で国内でも複数計画されています。背景にあるのは一時的な流行だけではなく、AIとクラウドを利用するための計算設備そのものが必要になっていることです。
国内では2030年に向けた新設・増設計画が進んでいる
日経クロステックが2026年にデータセンター事業者へ行った調査では、有効回答42社のうち24社が、2026~2030年に開業する新設・増設計画を合計38件挙げています。回答した事業者に限る数字であり、日本全国の計画総数ではありませんが、建設需要を考える具体的な材料になります。
同調査では、受電容量が100MWを超える施設が5件あり、液体で機器を冷却する「液冷」に対応する施設も半数超でした。つまり、建設件数だけでなく、設備の大型化や高性能化も進んでいます。投資の観点では、単純な建物の床面積より、電力や冷却設備の規模が重要になる場合があります。
生成AIの普及が電力と冷却設備の需要を増やす
生成AIは、大量の計算を行うGPUなどの半導体を使います。AI用のサーバーは高い処理能力を持つ反面、電力消費や発熱も大きくなりやすいため、普通のサーバーを置く設備とは異なる設計が求められます。電気を安定して供給し、機器の熱を取り除く設備も合わせて強化する必要があります。
国際エネルギー機関(IEA)は2025年の分析で、世界のデータセンターによる電力消費量が2030年には約945TWhに達し、2024年のおよそ2倍になるという基本シナリオを示しました。これは予測であり確定した需要ではありませんが、建設計画と電力インフラを一緒に考えるべき理由がわかります。
クラウドの成長と既存設備の更新も需要を支える
建設需要をAIだけで説明すると、実態を見誤ることがあります。企業の業務システム、動画配信、オンライン決済、データ保管など、多くのサービスはすでにデータセンターに支えられています。クラウド利用が増えれば、それを動かす設備の増強や拠点の追加が必要になる可能性があります。
既存施設でも、古い空調設備を省エネ型に替えたり、停電対策を強化したりする工事があります。建物を新築しなくても設備の入れ替え需要は生じるため、建設関連企業を調べる際は、新規案件だけでなく改修・保守・更新の売上にも目を向けたいところです。
データセンター建設では何を造る?普通の建物との違い

データセンターはサーバーを並べるだけの建物ではありません。昼夜を問わず安定して稼働させるため、建築工事に加えて電気・空調・通信・防災など多くの設備工事が必要です。
建物の耐震性とセキュリティが重視される
サーバーには企業の重要な情報やサービスを支える機器が収められています。そのため、地震などに備えた構造、重量のある機器を載せられる床、入退室管理などが重視されます。必要な性能は施設の用途や契約条件により異なり、すべてのデータセンターが同じ仕様になるわけではありません。
鹿島建設は公式サイトで、災害リスクに強い構造や高い信頼性、省エネルギーをデータセンター建設の特徴として掲げています。大林組も立地選定から設計・施工までを一括して提供すると説明しており、ゼネコンには一般的な建築だけではない総合的な調整力が求められます。
出典:鹿島建設・データセンター事業、大林組・データセンター技術
受変電設備・非常用電源・UPSが必要になる
データセンターにとって停電は大きなリスクです。電力会社から受け取る電気を適切な電圧に変える受変電設備に加え、瞬間的な停電を補うUPS(無停電電源装置)や、長い停電に備える非常用発電機などが使われます。電源の二重化や設備の予備を用意する場合もあります。
三菱電機は、データセンター向けに受配電設備、UPS、冷却機器、監視制御システムなどを提供すると公表しています。したがって、建設の恩恵を受ける企業は建築会社だけではありません。ただし、工場などほかの用途にも販売する会社では、データセンター向けの売上比率を確かめる必要があります。
AI向けでは空調だけでなく液冷への対応も重要
発熱したサーバーを適切な温度に保つためには冷却設備が欠かせません。従来から使われる空気による冷却だけでなく、発熱が大きい半導体に対応する液冷設備への注目も高まっています。液冷は導入すれば必ず省エネになるという単純なものではなく、設備構成や運転条件によって効果が変わります。
2026年6月にはNTTデータとダイキン工業が、サーバー内部の熱状態をAIで予測し、空調・熱源・液冷設備をまとめて制御する共同検証を発表しました。冷却の技術力や運用効率が、施設を建てた後の競争力にも関係することを示す事例です。
データセンターの建設場所はどこ?立地を決める条件

広い土地があるだけでデータセンターを建てられるわけではありません。安定した電力、通信網、災害への備えなど複数の条件がそろう必要があります。
最大の制約になりやすいのは大容量の電力
大規模なデータセンターでは大量の電気を継続的に使うため、周辺の電力網に余裕があるかどうかが重要です。候補地に土地が確保できても、変電所や送電線の増強が必要なら、開業が遅れたり工事費が増えたりする可能性があります。施設の電力容量と実際の稼働率は別の数字である点にも注意が必要です。
資源エネルギー庁のエネルギー白書2025は、電力網と通信網を効率的に整備する「ワット・ビット連携」を取り上げています。発電所に近い場所などへ立地を促し、電力輸送だけに頼らず通信回線の整備も含めて検討する考え方です。立地選びがエネルギー政策ともつながっていることがわかります。
東京・大阪への集中は続くが地方分散も進む
企業や利用者に近い都市圏は、通信ネットワークや保守体制を整えやすく、これまでデータセンターが集まりやすい地域でした。エネルギー白書2025によれば、2023年時点で国内のデータセンターは面積換算で約9割が東京圏と大阪圏に集中していました。
一方、日経BPの2026年調査で所在地が検討中の3件を除いた35件の内訳は、東京圏13件、大阪圏9件、両圏以外13件でした。地方の用地や電力を活用する動きも見られます。ただし、地方なら必ず低コストになるわけではありません。通信網の増強、保守要員の確保、輸送条件なども合わせて考える必要があります。
周辺住民への説明や環境対策も事業を左右する
データセンターは工場ほど目立つ煙を出さなくても、大型の建物や冷却機器の騒音、非常用発電機、交通、景観などについて周辺地域と調整が必要になることがあります。建設開始の前から説明を丁寧に進めなければ、計画変更や遅延につながる可能性もあります。
東京都は2026年、事業者と住民の対話や環境・まちづくりとの両立を重視したガイドラインを公表しています。投資家にとっては「建設を発表した」という事実だけでは不十分で、許認可、地域との合意、電力確保などの進捗まで確認したいところです。
データセンター建設費はいくら?工期と採算の考え方

建設費は施設の規模や仕様で大きく変わるため、一律に「1棟いくら」とは言えません。費用を比較するなら、何が含まれた金額なのかを最初に確かめることが大切です。
建設費は土地代・建物・電源・冷却・IT機器で異なる
データセンターの投資額には、土地取得、建物の建築、受変電設備、非常用電源、空調・液冷設備、通信設備などが含まれます。事業によってはGPUやサーバーの購入費も発表額に含まれますが、建物だけを対象にした「建設費」とは別物です。この違いを無視して案件同士の金額を比べると、規模を誤解しかねません。
比較に使われる指標の一つがMW当たりの建設コストです。ただし、施設全体の受電容量なのか、サーバーが実際に使えるIT容量なのかで分母が変わります。土地代やIT機器代、電力接続費の有無も異なるため、単価だけで割安・割高を判断しないようにしましょう。
資材高騰と技術者不足が利益を圧迫する場合もある
富士キメラ総研の2026年の調査案内では、2021~2023年の建設コスト上昇に加え、2025年も労務費上昇や工事従事者の確保難がコストを押し上げたと説明されています。資材や設備の調達状況によっても工事費は変わります。受注が増えることと、工事会社の利益率が上がることは同じではありません。
例えば、工事費100億円で請け負って原価が90億円なら粗利益は10億円ですが、原価が95億円へ上がり、契約金額を変更できなければ粗利益は5億円になります。これは単純化した計算例であり、実際の契約条件によって結果は違います。建設会社の決算では売上だけでなく採算を確認する理由です。
完成までの期間と開業後の稼働率を分けて考える
施設の整備には、用地の選定、電力会社との協議、基本設計、許認可、工事、設備試験などの工程があります。建物自体が完成しても、電力設備の接続や試運転が終わらなければ本格的に利用できません。工期は施設規模や敷地条件によって大きく異なります。
また、運営会社の採算を見る場合は、建設完了よりも顧客との契約や稼働率が重要になることがあります。テナントが利用できる電力容量のうち、どれだけ契約済みで、いつ売上につながるのかを確かめましょう。建設会社の受注計上時期と運営会社の収益が増える時期には、ずれが生じます。
データセンター建設の関連銘柄は?業種別に整理

関連銘柄を考えるときは「データセンターを建てる会社」「建物の中に設備を入れる会社」「施設を開発・運営する会社」を分けると整理しやすくなります。以下は国内上場企業の事業内容から見た例であり、株価上昇や受注増を保証するものではありません。
| 関係する分野 | 企業例(証券コード) | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 建築・設計施工 | 大林組(1802)、鹿島建設(1812)、清水建設(1803) | 建設実績、受注残高、工事採算 |
| 空調・冷却 | 高砂熱学工業(1969)、ダイキン工業(6367) | データセンター向け案件、冷却技術、利益率 |
| 電源・設備機器 | 三菱電機(6503)、三菱重工業(7011) | UPS、受変電、発電・冷却設備の案件 |
| 施設の開発・運営 | NTT(9432)、KDDI(9433) | 設備投資額、顧客契約、稼働率、投資回収 |
大林組・鹿島建設・清水建設などのゼネコン
ゼネコンは建物の企画、設計、施工、協力会社の管理などを担います。大林組は公式サイトでデータセンターの設計施工一式を提供しており、鹿島建設は耐震性・安定稼働・省エネへの対応を示しています。清水建設にもデータセンターの施工実績があります。このため、大規模建設投資の受け皿の一つとして考えられます。
ただし、大手ゼネコンには住宅以外にもオフィス、工場、公共工事など幅広い事業があります。データセンターの大型案件を獲得しても、全体の売上に占める割合が小さければ業績への影響は限られます。企業発表で施工実績を確認したうえで、決算説明資料の受注内容まで見ておくと判断しやすいです。
高砂熱学工業・ダイキン工業などの空調関連
建物の冷却システムを扱う企業も注目対象です。高砂熱学工業はデータセンター向けの空調設計や省エネ運用に関する技術を紹介しています。ダイキン工業は2026年に、NTTデータとの次世代冷却制御の検証を発表しており、AI向けの高発熱サーバーへの対応が事業機会になり得ます。
空調関連を調べる場合は、単なる「AI関連」という言葉よりも、実際に納入する製品や工事の範囲を見るのが実用的です。空調機器を売るのか、システム設計・施工まで請け負うのか、保守や運転最適化で継続収益を得るのかによって、業績への影響の出方が変わります。
三菱電機・三菱重工業などの電源・設備関連
電源設備も重要な投資対象です。三菱電機は受配電設備、UPS、冷却、監視制御をデータセンター向けに展開しています。三菱重工業もデータセンター向けに発電・冷却・運用管理に関するソリューションを掲げています。建物が増えるだけでなく、高い信頼性やエネルギー効率が求められることが商機につながる可能性があります。
もっとも、こうした大企業は事業領域が広く、データセンター関連の好調さが会社全体の利益に反映されるまでには時間がかかる場合があります。関連製品があるだけで「データセンター専業」と捉えず、売上構成や事業別の利益、将来の設備投資計画まで確認したいところです。
NTT・KDDIなどの開発・運営企業
施設の建設を発注し、その後の運営を担う企業は、ゼネコンとは収益構造が異なります。NTTデータグループは2026年4月、千葉県印西・白井エリアで大規模データセンターキャンパスの開発計画を公表しました。KDDIは2026年1月、大阪堺データセンターの稼働を開始し、既存工場の電力・冷却設備を再利用しています。
運営側は長期の顧客契約を得られれば継続収入を見込める一方、建設費や借入金、減価償却、電気代などを負担します。施設を持つことが直ちに高収益を意味するわけではありません。NTTについてはグループ企業の事業が上場親会社の業績にどう影響するか、KDDIについてはAI関連投資の回収をどう進めるかが確認点です。
出典:NTTデータグループ・印西白井の開発計画、KDDI・大阪堺データセンター稼働開始
データセンター関連株を選ぶときに確認したい指標

大きなニュースを見て銘柄を買う前に、企業の業績にどの程度の影響があるかを確かめることが大切です。次の点を比較すると、話題性と実際の収益を分けて考えられます。
受注残高と完成工事利益率を確認する
建設会社では受注残高が将来の売上につながる可能性を示します。ただし、その中身がすべてデータセンターとは限りません。また、受注残高が増えていても、資材や人件費の上昇を価格に反映できなければ利益が伸びないことがあります。売上高、受注高、受注残高、利益率をまとめて見てください。
さらに、発表された大型案件が単独受注か共同企業体による受注かでも、企業が実際に担当する金額は変わります。開業予定年と工事会社の売上計上年が一致するとも限りません。可能であれば決算説明資料で部門別の状況を確認するのがよいでしょう。
運営企業では投資額と契約状況の両方を見る
データセンターを保有する企業は、施設完成後に顧客が利用して初めて投資回収が進みます。建設計画のMW数が大きくても、すべての容量が利用されるとは限りません。開業時点の契約済み容量、稼働率、賃貸契約の期間などが公表されていれば確認する価値があります。
一方で、設備投資による借入金の増加や金利上昇は負担になります。企業の説明資料では営業利益だけでなく、営業キャッシュフロー、設備投資額、フリーキャッシュフローも見ておきたいところです。売上が伸びていても、現金の支出が先行する時期はあります。
株価に成長期待がどこまで織り込まれているか考える
需要が伸びる分野でも、株価がすでに大幅に上昇していれば、今後の好材料が出ても株価の反応が小さい場合があります。PER(株価収益率)は利益に対して株価が何倍かを見る指標ですが、設備投資が大きい企業では一時的な利益変動もあるため、それだけで判断できません。
同業他社との利益率、過去の株価水準、受注と利益の伸び方などを合わせて確認しましょう。特に関連事業の比率が低い企業を「純粋なデータセンター関連株」として高く評価していないか注意が必要です。
データセンター建設ラッシュのリスクと注意点

需要の拡大が見込まれても、すべての計画が順調に進むとは限りません。建設事業と株式投資の両面から、想定外の事態を考えておく必要があります。
電力接続や冷却設備の調達で遅れる可能性がある
AI向けデータセンターでは、建物以上に電力と冷却能力が課題になる場合があります。大容量の電力を早く確保できなければ、計画の規模縮小や開業延期が起こる可能性があります。変圧器などの大型設備が予定通り調達できるかも重要です。
2026年10月にはJERAがDell Technologies、RHAELMと日本のAIインフラ整備に向けた覚書を結び、発電設備と冷却設備、計算基盤を一体的に検討する構想を公表しました。これは電源確保が事業の重要課題であることを示す例ですが、覚書の締結と事業化の決定、完成とは区別しなければなりません。
AI投資の減速や供給過剰で採算が変わることもある
データセンターは将来の利用を見越して大きな投資をするため、需要予測が外れると空き容量を抱えるおそれがあります。AI向け設備への投資が計画より遅れたり、企業のクラウド利用拡大が鈍化したりすれば、運営事業者の採算は悪化しかねません。
もっとも、同じ「データセンター関連」でも影響は一様ではありません。建設会社はすでに契約した工事の採算、設備メーカーは受注から納入までの期間、運営会社は長期稼働率の影響を受けます。どの段階で収益を得る企業なのかを把握すると、リスクの違いが見えてきます。
地域問題・環境負担・電力料金も無視できない
大型施設は電力や水、土地を使うため、環境や地域への影響が議論になることがあります。施設の冷却方式によって水の使用条件は異なり、すべての施設が大量の水を使うわけではありません。騒音、景観、防災対策なども案件ごとの評価が必要です。
投資家としては、会社が発表する再生可能エネルギーの活用方針だけでなく、実際の電力調達費用や契約条件、地域との協議状況を確認したいところです。設備投資の拡大という良いニュースと、電気代上昇や工期延長という負担が同時に発生する可能性もあります。
まとめ|データーセンター建設は建築だけでなく電力・冷却まで確認する
データーセンター建設は、生成AIやクラウド利用の広がりを背景に、国内でも2030年に向けた新設・増設計画が進んでいます。ただし、建設の成否は用地だけでなく、大容量の電力供給、冷却技術、通信回線、地域との調整などに左右されます。
関連銘柄を探す際は、ゼネコン、空調・冷却、電源設備、開発・運営という事業の違いに着目してください。重要なのは建設ニュースの件数ではなく、その会社の受注・利益・投資回収にどれだけ結びつくかです。 実際の決算資料と建設計画の進み具合を確かめ、価格面のリスクも踏まえて判断しましょう。

