20代での海外移住は、新しい価値観に触れ、キャリアの幅を広げる大きなチャンスです。しかし、いざ準備を始めると「日本に残すお金はどうすればいいの?」「積立NISAや証券口座は継続できる?」といった疑問が次々と湧いてくるのではないでしょうか。移住後の生活を存分に楽しむためには、出発前からの戦略的な計画が欠かせません。
特に20代 海外移住 資産管理というキーワードで検索される方は、将来を見据えた堅実な資産形成を意識されていることでしょう。この記事では、非居住者になる際の日本の銀行・証券口座の扱いから、現地での効率的な運用方法、そして見落としがちな税金の問題までを分かりやすく丁寧に解説します。
海外という新しい環境で、資産を減らさず着実に増やしていくための具体的なステップを確認していきましょう。若いうちからグローバルな視点でお金を管理するスキルを身につければ、将来の選択肢はさらに広がります。この記事が、あなたの新しいステージへの第一歩を支える指針となれば幸いです。
20代の海外移住と資産管理に向けた最初のステップ

海外移住が決まったら、まず最初に行うべきは「日本の金融資産の整理」です。20代の方は、社会人になって数年が経ち、銀行口座やクレジットカード、少しずつ始めた投資信託などを持っていることが多いでしょう。これらを「日本に住んでいるときと同じ状態」で維持することは、実は多くのルールによって制限されています。
日本の金融機関の多くは、日本国内に居住していることをサービスの提供条件としています。そのため、海外に拠点を移す「非居住者(ひきょじゅうしゃ)」になる場合は、それぞれの口座について継続利用が可能か、解約が必要かを個別に確認しなければなりません。まずは全体の把握から始めましょう。
日本国内の銀行口座を整理して維持・解約を判断する
日本のメガバンクやネット銀行の多くは、海外へ移住して日本の住民票を抜く場合、原則として口座の解約を求めています。しかし、将来的に日本へ帰国する可能性がある場合や、日本での支払いが残っている場合、すべての口座を閉じるのは不便です。まずは、各銀行が「非居住者」に対してどのような対応をしているかを調査しましょう。
一部の銀行では、海外赴任や留学などの理由であれば、手数料を支払うことで口座を維持できるサービスを提供しています。例えば、三菱UFJ銀行の「グローバルダイレクト」などが有名です。一方で、多くのネット銀行は海外居住者向けのサービスを提供していないため、基本的には解約の手続きを進める必要があります。
20代の方は、複数のサブ口座を持っていることも多いですが、管理の手間を減らすためにもメインの1〜2口座に集約することをおすすめします。移住直前は非常に忙しくなるため、出発の3ヶ月前には方針を固めておきましょう。残す口座は、日本国内でのネットバンキング利用が可能かどうかも重要な判断基準となります。
銀行口座を整理する際のチェックポイント
・非居住者でも維持できるサービスがあるか確認する
・ネットバンキングのワンタイムパスワードが海外で受け取れるか
・日本でのクレジットカード引き落としや保険料支払いに対応できるか
クレジットカードの継続利用と海外旅行保険の活用
日本のクレジットカードは、海外でもVISAやMastercardブランドであれば決済に利用できます。しかし、カード会社によっては登録住所が日本国内であることを条件としている場合があり、有効期限が切れた際の更新カードを海外に送ってくれないケースがほとんどです。実家の住所に変更しておくことで対応可能な場合もありますが、規約を遵守することが大切です。
また、20代の移住者が注目したいのが、クレジットカードに付帯している「海外旅行保険」です。移住直後の数ヶ月間、現地の公的保険や民間保険に加入するまでの「つなぎ」として、カード付帯の保険が役立ちます。ただし、多くのカードでは「出国から90日間」などの期限があるため、補償内容と期間を事前に把握しておきましょう。
一方で、外貨で決済する際には「海外事務手数料」というコストが発生します。1回あたりの手数料は数パーセントですが、現地の生活費すべてを日本のカードで支払うと無視できない金額になります。移住後は速やかに現地の銀行カードを作成し、日本のカードは緊急用や日本での決済用として使い分けるのが賢明な資産管理といえます。
海外転出届の提出とマイナンバーカードの扱い
1年以上海外に住む予定がある場合、市区町村役場に「海外転出届」を提出するのが一般的です。これを提出することで、日本の住民票が除票され、法律上の「非居住者」となります。この手続きは資産管理において非常に重要で、国民健康保険料や住民税の支払い義務に直結します。20代のうちは出費を抑えたい時期でもあるため、適切な手続きで負担を最適化しましょう。
マイナンバーカードについても、以前は海外転出時に返納して失効していましたが、2024年5月からは「継続利用」が可能になりました。これにより、海外にいてもマイナンバーを利用した公的な手続きがスムーズに行えるようになっています。ただし、金融機関の住所変更やマイナンバー紐付けには依然として国内住所が必要な場合が多いため、最新の情報を確認してください。
海外転出届を出すと、住民税の納税義務がなくなる(前年の所得に対する支払いは残ります)一方で、国民年金の強制加入義務もなくなります。ここで「任意加入」を選択して将来の年金額を確保するか、あるいは加入を止めて現地の個人年金や投資に回すかは、個人のキャリアプランによって異なります。自分のライフスタイルに合った選択を行いましょう。
初期費用と生活防衛資金のシミュレーション
海外移住には、航空券代やビザ申請費用だけでなく、現地での家賃デポジット(敷金)や家具の購入費など、まとまった初期費用がかかります。20代の場合、まだ貯蓄が十分でないケースも考えられますが、少なくとも「3ヶ月から半年分の生活費」は、すぐに動かせる現金として確保しておくことが重要です。
現地の通貨に両替する際の為替レートや送金手数料も、資産管理の観点から無視できません。出発前に日本円をすべて外貨に替えるのではなく、一部を日本円のまま残し、必要な分を都度送金する方法がリスク分散になります。現地の物価を事前にリサーチし、想定よりも2割ほど多めに見積もっておくと、予想外の出費にも落ち着いて対応できます。
また、万が一現地での仕事が見つからなかったり、病気で働けなくなったりした場合の「帰国用航空券代」も、生活防衛資金とは別に分けて保管しておきましょう。こうした心の余裕が、新しい環境での挑戦を支える土台となります。資産管理は、単にお金を増やすだけでなく、リスクを最小限に抑える守りの視点も同様に重要です。
非居住者が直面する日本の証券口座とNISAの注意点

資産運用を行っている20代にとって、最も頭を悩ませるのが「日本の証券口座をどうするか」という問題です。最近では、つみたてNISAなどを通じて投資を始めた方も多いでしょう。しかし、日本の税制や証券会社の規約上、海外に移住して非居住者になると、今までと同じように運用を続けることは難しくなります。
結論から言うと、多くの国内証券会社では、非居住者に対して「新規の買い付け停止」や「口座の閉鎖・凍結」を求めています。これは、証券会社が居住国の金融ライセンスを持っていないため、現地の法律に抵触する可能性があるからです。ここでは、移住時に知っておくべき運用のルールを詳しく見ていきましょう。
一般的な証券会社での口座維持が難しい理由と現状
SBI証券や楽天証券などの主要なネット証券では、海外へ移住する場合、原則として「常任代理人」を立てるか、あるいは口座内の資産をすべて売却して解約することを求めています。常任代理人とは、本人に代わって通知を受け取ったり手続きを行ったりする人のことで、多くの場合、実家の家族などがその役割を担います。
しかし、常任代理人を立てたとしても、海外にいる間は「新たな株や投資信託の購入」は一切できません。保有し続ける(ガチホする)ことは可能ですが、メンテナンスができない状態になります。また、住所変更を行わずに隠れて利用し続ける行為は、規約違反となり強制解約や資産凍結のリスクを伴うため、決しておすすめできません。
20代は運用期間が長いため、数年間の移住であれば保有し続ける選択肢もありますが、証券会社ごとに対応が全く異なります。例えば、野村證券などは以前から非居住者の口座維持に対応していましたが、手数料が高額な傾向にあります。自分が利用している証券会社の「海外転出時の対応」を、まずはヘルプページやカスタマーサポートで確認してください。
一部の証券会社では、5年以内の海外赴任などに限り、一定の手続きを経てNISA口座を維持できる制度があります。ただし、その期間中は新規の投資ができず、ロールオーバーなどの制約もあるため、利用前に詳細な条件を確認する必要があります。
新NISA制度における海外移住時の運用ルール
2024年から始まった新NISAは、非課税保有期間が無期限となり、非常に魅力的な制度です。しかし、この新NISAも「日本居住者」を対象とした制度であるため、海外移住時には制限がかかります。原則として、海外転出届を提出して非居住者になる場合、NISA口座内での新規買い付けはできなくなります。
ただし、制度の改正により、一時的な海外転出であれば最大5年間はNISA口座で資産を持ち続けることが可能になりました。これには事前に「海外転出届出書」を証券会社に提出する必要があります。この期間内であれば、運用益は引き続き非課税となりますが、5年を超えても帰国しない場合は、課税口座(特定口座や一般口座)に移されるか、売却を求められます。
20代の移住者が「将来の帰国」を前提にしているなら、この5年間の猶予制度を活用するのがベストです。一方で、永住する予定がある場合は、日本でのNISAにこだわらず、早めに利益を確定させて現地での運用資金に回すほうが、効率的な資産管理につながることもあります。自分の将来設計と照らし合わせて、継続か売却かを判断しましょう。
海外でも利用可能な日系・外資系証券会社の選択肢
日本の一般的な証券会社が使えない場合の代替案として、「インタラクティブ・ブローカーズ(IBKR)」のようなグローバル展開している証券会社を検討するのも一つの手です。IBKRは世界中の多くの国でライセンスを持っており、居住地が変わっても住所変更手続きだけで口座を引き継げることが多いのが最大の特徴です。
また、日本国内の証券会社でも、日本株の保有に特化して非居住者向けサービスを提供しているところもあります。しかし、20代の少額投資家にとっては、維持手数料などが負担になるケースも少なくありません。もし移住先が米国や欧州であれば、現地で非常に低コストな証券口座を開設できるため、日本に資産を残すことに固執しすぎない柔軟な姿勢も大切です。
特に、移住先で働く予定があるなら、給与を現地の通貨で受け取り、そのまま現地の証券会社で運用するほうが為替手数料を抑えられます。日本での運用は「帰国後のため」と割り切り、海外生活中のメインの運用は現地で行うという「ハイブリッドな管理」が、20代の海外移住者にとって最も現実的な戦略となるでしょう。
海外居住者におすすめの運用方針
・5年以内の帰国予定なら、NISAの継続手続きをして保有し続ける
・長期の移住なら、日本の資産を一部整理して現地の証券口座を開く
・グローバルな証券会社を活用し、居住地が変わっても運用を途絶えさせない
日本株を保有し続ける際のリスクと源泉徴収
もし日本株を特定口座で保有し続けたまま海外へ行った場合、配当金などの税務処理が複雑になります。非居住者が日本国内の株から配当を受け取る場合、通常は15.315%(所得税+復興特別所得税)が源泉徴収されます。移住先の国と日本の間で租税条約が結ばれている場合は、手続きをすることで税率がさらに下がることもあります。
ただし、ここで注意したいのが「特定口座(源泉徴収あり)」の扱いがなくなる点です。非居住者は特定口座を維持できないことが多く、一般口座に移されます。一般口座では自分自身で損益計算や税務申告を行う必要があるため、管理の手間が大幅に増えます。20代の忙しい生活の中で、日本の複雑な税務を遠隔でこなすのは想像以上に大変な作業です。
そのため、管理の簡素化を優先するなら、移住前に投資信託などを一旦全て売却し、現金化してから出発するのも有力な選択肢です。一度リセットすることで、移住先での新しい生活に集中でき、為替レートが良いタイミングを見て少しずつ現地での運用にシフトしていくことができます。資産管理の本質は「自分が把握しきれる範囲で運用すること」にあると言えます。
移住先での生活を支える現地の資産運用と銀行選び

日本国内の手続きが終わったら、次は「移住先での資産管理」に目を向けましょう。20代の海外移住において、現地でのお金の流れをいち早く整えることは、生活の安定に直結します。日本の銀行口座から現地の口座へ、どのようにお金を移し、どのように管理するのが最も効率的なのかを具体的に考えていきます。
最近ではフィンテックの進化により、従来のメガバンクを通じた高額な送金手数料を支払う必要はなくなりました。また、現地の銀行口座選び一つで、貯蓄のしやすさや投資の利便性が大きく変わります。海外という新しいフィールドで、自分自身の資産を守り育てるためのテクニックをマスターしましょう。
現地の銀行口座開設とデビットカードの有効活用
移住先に到着したら、まずは給与の受取や家賃の支払いのために現地の銀行口座を開設する必要があります。20代の移住者には、店舗を持つ伝統的な銀行だけでなく、「ネオバンク」と呼ばれるモバイル完結型の銀行も人気です。例えば、欧州ならRevolut(レボリュート)やMonzo(モンゾ)、米国ならChime(チャイム)などが挙げられます。
これらのネオバンクは、スマートフォンのアプリ上で即座に口座開設ができ、デビットカードの発行も早いため、移住初期の強い味方になります。また、予算管理機能や貯金用ポケット機能などが充実しており、慣れない現地通貨での支出をコントロールするのに非常に役立ちます。伝統的な銀行口座をメインに、ネオバンクを日常の決済用に使い分けるのがおすすめです。
また、現地のデビットカードは、スーパーでの買い物から公共交通機関の利用まで幅広く使われます。海外では日本以上にキャッシュレス化が進んでいる国が多く、現金を持ち歩くリスクも減らせます。資産管理の観点からは、支払いの履歴がすべてアプリに残るため、家計簿をつける手間が省け、支出の無駄を見つけやすくなるというメリットもあります。
海外送金サービス「Wise」を徹底的に使いこなす
日本の預金を現地の口座に移動させたいとき、銀行の国際送金を使うのは賢明ではありません。手数料が高いうえに、為替レートに「隠れたコスト」が上乗せされていることが多いからです。ここで活用したいのが、Wise(ワイズ)などの格安海外送金サービスです。これを使うだけで、数万円単位のコスト削減ができる場合もあります。
Wiseは、実際の為替レート(ミッドマーケットレート)を使用し、透明性の高い格安な手数料で送金ができるサービスです。20代の移住者の間ではもはや必須のツールと言っても過言ではありません。また、Wiseのマルチカレンシー口座(多通貨口座)を持っておけば、日本円を安い時期に外貨に替えておき、必要なときに現地の口座へ移動させるといった柔軟な管理が可能です。
さらに、Wiseのデビットカードを使えば、現地の銀行口座ができるまでの間も、日本円の残高から直接現地通貨で決済ができます。資産管理の初期段階において、これほど便利なツールはありません。出発前に日本でアカウントを作成し、本人確認を済ませておくと、移住直後の資金繰りがスムーズになります。為替の変動を味方につけるための準備を整えましょう。
移住国独自の優遇税制や投資制度をリサーチする
日本にNISAがあるように、多くの国には独自の投資優遇制度があります。例えば、英国には「ISA」、米国には「Roth IRA」や「401(k)」、カナダには「TFSA」や「RRSP」といった制度が存在します。これらは、運用益が非課税になったり、拠出額が所得控除の対象になったりするため、現地の所得がある場合は積極的に利用すべきです。
20代のうちにこうした現地の制度を理解し、少額からでも投資を始めることは、将来の大きな資産形成につながります。現地の公用語で情報を集めるのは少し大変かもしれませんが、政府の公式サイトや現地の投資ブログなどをチェックしてみましょう。移住してすぐに現地の税制を味方につけることが、資産管理の成功を左右します。
ただし、これらの制度は「その国の居住者」であることが条件です。帰国する際にどのように資産を持ち出せるのか、あるいは継続して保有できるのかといった「出口戦略」もあわせて確認しておく必要があります。現地の制度を賢く使い倒すことで、日本の投資環境以上のパフォーマンスを出せる可能性も十分にあります。
海外の主な投資優遇制度の例
・米国:Roth IRA(運用益非課税の個人年金口座)
・英国:ISA(NISAのモデルになった非課税口座)
・カナダ:TFSA(柔軟な引き出しが可能な非課税口座)
・オーストラリア:Superannuation(強力な強制積立年金)
外貨建てでの分散投資と為替リスクの考え方
海外移住をすると、資産の大部分が現地通貨(外貨)にシフトしていきます。これは日本円の価値が下がったときのリスクヘッジになりますが、逆に日本円が強くなったときには資産価値が目減りすることになります。20代の資産管理では、特定の通貨に依存しすぎない「通貨の分散」を意識することが重要です。
例えば、日本円、移住先の通貨(ユーロやポンドなど)、そして世界最強の通貨である米ドルの3種類で資産を保有することを検討しましょう。米ドル建てのETF(上場投資信託)であれば、世界中のどこの国からでもアクセスしやすく、流動性も高いため、グローバルな資産形成の核として非常に適しています。
為替レートは日々変動しますが、長期的には「物価上昇(インフレ)」の影響も考慮しなければなりません。日本よりも物価上昇率が高い国に移住した場合、現金をそのまま持っているだけでは、実質的な購買力が下がってしまいます。現地のインフレ率を上回る利回りを目標に運用を行うことが、海外での資産管理において欠かせない視点となります。
世界を舞台にした20代からの効率的な資産形成術

20代で海外移住を選択したあなたは、すでに人とは違う貴重な一歩を踏み出しています。資産管理においても、日本の枠にとらわれない「グローバル・スタンダード」な考え方を取り入れることで、効率的に資産を増やすことができます。若さという最大の武器である「時間」を最大限に活かす戦略を立てましょう。
海外では日本よりも投資が身近な文化であることが多く、若いうちから積極的に運用を行うことが当たり前とされている国も少なくありません。周囲の環境に刺激を受けながら、日本にいたままでは気づけなかった投資機会を見つけていくのも、海外生活の醍醐味の一つです。ここでは、世界を視野に入れた具体的な運用戦略を深掘りします。
日本円だけに依存しないポートフォリオの構築
多くの日本人は、資産のほぼ100%を日本円(現金、保険、不動産、日本株)で保有しています。しかし、これは「日本という一国への集中投資」という大きなリスクを背負っている状態です。海外に移住し、現地で働くことで、自然と外貨での収入が得られるようになります。これは、ポートフォリオの多様性を高める絶好の機会です。
理想的なのは、日本円、現地通貨、そして米ドルなどを組み合わせた多通貨ポートフォリオです。20代であれば、リスクを取って成長性の高い資産に配分することも可能です。例えば、資産の50%を米ドル建ての全世界株式に、30%を現地の定期預金や債券に、残りの20%を日本円での貯蓄や運用に回すといった構成が考えられます。
このように通貨を分散させることで、移住先の経済が停滞したり、日本円が急落したりしても、資産全体へのダメージを最小限に抑えられます。資産管理の本質は、不確実な未来に対して「どのシナリオでも生き残れる」ように準備することです。海外移住を機に、真の意味でのグローバル投資家を目指しましょう。
全世界株式(オルカン)などのインデックス投資を核にする
どこに住んでいても変わらない最強の投資戦略の一つが、低コストなインデックスファンドへの積立投資です。日本で「オルカン(全世界株式)」として知られる投資手法は、海外でも主流です。移住先の証券口座を使って、Vanguard(バンガード)やBlackRock(ブラックロック)などの大手運用会社が提供するETFを購入するのが非常に効率的です。
なぜインデックス投資が海外移住者に向いているかというと、制度や国境を越えて「同じ中身の資産」を持ち続けられるからです。例えば、米国株ETFである「VOO」や全世界株ETFの「VT」は、世界中で取引されています。万が一、さらに別の国へ移住することになっても、保有している資産の価値が変わることはなく、手続き一つで管理を継続できます。
20代は複利の力を最も享受できる世代です。毎月一定額をコツコツと積み立てる「ドルコスト平均法」を継続することで、為替の変動を平準化しながら、世界経済の成長の恩恵を受けることができます。複雑な銘柄分析に時間を取られるよりも、現地の生活や仕事に集中し、運用はシンプルに自動化するのが、賢い資産管理のあり方です。
自己投資としてのスキルアップと副業の検討
20代の資産管理において、金融資産の運用以上に重要(かつリターンが大きい)なのが「自分自身への投資」です。海外移住で身につけた語学力、異文化適応能力、そして現地で培った専門スキルは、将来の年収を大きく引き上げる原動力になります。10万円を株で運用して数千円の利益を出すよりも、スキルを磨いて月給を5万円上げるほうが、資産形成のスピードは圧倒的に早まります。
また、海外にいながら日本の仕事を請け負ったり、あるいは世界中のクライアントを相手に副業を始めたりすることも検討しましょう。リモートワークが普及した現代では、居住地に関係なく稼ぐ力を身につけることが、最強の資産管理術となります。複数の収入源(インカムストリーム)を持つことで、現地の雇用情勢に左右されない安定した基盤を作ることができます。
特に、日本円と外貨の両方で稼げるようになると、為替レートの変動に合わせて「どちらを貯め、どちらを使うか」を柔軟に選択できるようになります。これは、海外移住者だけが持てる大きな強みです。勉強のための書籍代やセミナー代、ネットワークを広げるための交際費は、将来の自分を豊かにするための必要経費として、積極的に予算を割り当てましょう。投資の対象は、画面上の数字だけではありません。
早期リタイア(FIRE)を目指す場合のシミュレーション
最近の20代に注目されている「FIRE(経済的自立と早期リタイア)」も、海外移住を組み合わせることで実現可能性が高まる場合があります。物価の安い国へ移住し、日本や欧米の基準で稼ぎながら、生活費を抑えて運用に回す「ジオ・アービトラージ(地理的裁定取引)」という手法です。これにより、日本にいるよりも圧倒的なスピードで資産を築ける可能性があります。
しかし、FIREを目指すなら、より厳密な資産管理と将来設計が求められます。移住先の税制はもちろん、将来のインフレ率や、万が一の医療費、老後の年金受給額などを詳細にシミュレーションしなければなりません。また、特定の国に依存しすぎるのも危険です。制度が変わってビザが更新できなくなった場合でも、資産を維持できる体制を整えておく必要があります。
FIREは単なる「働かない生活」ではなく、自分の時間を100%コントロールするための手段です。海外移住という経験を通じて、自分にとっての幸せとは何か、どれくらいの資産があれば満足できるのかを見つめ直してみましょう。20代という早い段階でこの目標を持つことは、お金の使い方の優先順位を明確にし、結果として効率的な資産管理につながります。
20代のグローバル資産形成まとめ
・通貨の分散を意識し、円安・円高の両方に備える
・インデックス投資を核にし、管理の手間を最小限にする
・稼ぐ力を最大化するための「自己投資」を惜しまない
・長期的な目標(FIREなど)を持ち、定期的に計画を見直す
税務面でのトラブルを防ぐための必須知識

資産管理において、避けて通れないのが「税金」の問題です。特に海外移住が絡むと、日本の税務当局と現地の税務当局の両方が関わってくるため、知識不足から意図せず脱税状態になってしまうリスクがあります。20代の方は、これまで会社に任せきりだった確定申告などを、自分自身で理解し、適切に行う必要が出てきます。
税務トラブルは、せっかく築いた資産を大きく削る原因になるだけでなく、最悪の場合、ビザの更新や帰国後の生活にも影響を与えかねません。「知らなかった」では済まされない国際税務の基本を押さえ、透明性の高い資産管理を心がけましょう。ここでは、海外移住者が直面する主要な税金のリスクと対策を解説します。
日本と居住国の「二重課税」を防ぐ租税条約の仕組み
海外で収入を得たり投資を行ったりする場合、日本と現地の両方から課税される「二重課税」が心配になります。これを防ぐために、世界中の多くの国が「租税条約」を締結しています。この条約によって、どちらの国が課税権を持つか、あるいは税率をどれくらいにするかが決まっています。
例えば、日本の銀行預金の利息を受け取るとき、非居住者であれば日本の税金が免除されたり、軽減されたりする場合があります。そのためには、金融機関を通じて「租税条約に関する届出書」を提出する必要があります。これを忘れると、日本で20.315%引かれ、さらに現地でも課税されるという損をすることになります。
自分の移住先と日本が租税条約を結んでいるか、その内容はどのようになっているかを一度調べておきましょう。外務省や国税庁のウェブサイトで確認できます。特に、配当金や利子、ロイヤリティなどの「不労所得」がある場合は、この手続きの有無で手残り金額が大きく変わってきます。資産管理の第一歩は、取られる税金を正しく最小化することにあります。
確定申告が必要になるケースとその手続き
海外に住んでいても、日本国内で発生した所得(国内源泉所得)がある場合は、日本で確定申告が必要になることがあります。典型的な例としては、日本に残してきたマンションの家賃収入がある場合や、日本の企業から業務委託で報酬を受け取っている場合などが挙げられます。
この場合、本人に代わって納税手続きを行う「納税管理責任者」を選任し、税務署に届け出る必要があります。20代であれば、実家の両親などに依頼するのが一般的です。海外転出前にこの手続きを済ませておかないと、納税が遅れて延滞税がかかる恐れがあります。また、移住先でも全世界所得に対して課税される国が多いいため、日本での納税分を現地の申告で差し引く「外国税額控除」の申請も必要になります。
税務手続きは非常に煩雑ですが、最近ではマイナンバーカードを利用したe-Taxにより、海外からでもオンラインで申告ができるようになりつつあります。ただし、すべてのケースに対応しているわけではないため、事前の準備が重要です。自分の所得がどこで発生しているのかを整理し、必要な申告漏れがないようにリストアップしておきましょう。
日本の会社からリモートで仕事をしている場合、その報酬が「日本国内での労働」とみなされるか「海外での労働」とみなされるかで、納税先が変わります。183日ルールなどの滞在期間も関係するため、専門家の意見を聞くのが最も安全です。
出国税(国外転出時課税)が適用される条件の確認
資産管理を行っている富裕層向けに導入されたのが「出国税」ですが、20代でも投資が成功している場合は注意が必要です。この制度は、1億円以上の金融資産(株や投資信託など)を保有している人が海外へ移住する際、含み益に対して課税されるというものです。実際に売却していなくても、「売ったものとみなして」税金が計算されます。
「自分には1億円も資産がないから関係ない」と思うかもしれませんが、若くして起業したり、仮想通貨や特定の銘柄で大きな成功を収めたりしている方は対象になる可能性があります。また、この資産額には日本の資産だけでなく、海外の証券口座で保有している分も含まれるため、ポートフォリオ全体をチェックする必要があります。
もし対象になる可能性がある場合は、納税猶予の手続きを行うか、出国前に一部を売却して納税資金を確保するなどの高度な対策が必要です。出国税の判定は、出国時の時価で行われるため、市場が過熱している時期に移住を検討している方は、資産評価額の変動に注視しておきましょう。資産を守るためには、こうした法律の網を知っておくことが不可欠です。
移住後の住所変更を放置することによる法的リスク
「面倒だから日本の住所のままにしておこう」という安易な考えは、資産管理において最も危険な行為の一つです。金融機関に住所変更を届け出ず、日本居住者を装ってサービスを利用し続けることは、規約違反だけでなく、脱税やマネーロンダリングの疑いをかけられる原因にもなります。
現在、多くの国では「共通報告基準(CRS)」という制度を導入しており、銀行口座の情報が税務当局間で自動的に交換されています。つまり、海外で口座を開設した情報は日本の国税庁に伝わりますし、逆もまた然りです。住所の不一致があれば、当局から確認の連絡が入り、最悪の場合は口座の凍結や重加算税の対象となります。
20代はこれから長く資産を築いていく時期ですから、最初からクリーンな状態で管理することが、結局は一番の近道です。すべての金融機関に正しい居住地を届け出、必要に応じて非居住者向けの手続きを行うこと。この誠実な姿勢が、あなたのグローバルな信用(クレジット)を守ることにつながります。
税務トラブルを防ぐためのアクションリスト
・日本と移住先の租税条約を確認し、二重課税を防ぐ手続きをする
・日本での所得がある場合は、納税管理人を選任して出発する
・金融機関には速やかに海外住所への変更(または実家への変更)を届け出る
・現地の税務申告の時期と方法を移住後すぐに確認する
後悔しないための20代海外移住資産管理チェックリスト

ここまで、口座の整理から投資戦略、税金まで幅広く解説してきました。海外移住は人生の大きな転換点であり、お金に関するやるべきことが山積しています。特に20代は、勢いで行動できる反面、細かな手続きを後回しにしてしまい、後で大きな代償を払うことになりがちです。
移住生活が始まってから「しまった!」と後悔しないために、出発前から移住後数ヶ月までに確認すべきチェックリストをまとめました。これらを一つずつクリアしていくことで、お金の不安を解消し、新しい挑戦に全力投球できる環境を整えましょう。あなたの資産管理を万全にするための最終確認です。
日本での住所を「実家」にする場合の注意点
海外転出届を出して住民票を抜いた後、銀行やクレジットカードの郵便物受け取り先を実家の住所に変更する方は多いでしょう。これは管理上便利ですが、いくつか注意点があります。まず、実家の家族に「重要書類が届く可能性があること」を伝え、封筒の写真だけでも送ってもらえるような協力体制を作っておくことが重要です。
また、実家に住所を置いているからといって「日本居住者」として振る舞い続けるのはNGです。あくまで「連絡先」としての登録であり、実態は海外にあることを金融機関が正しく認識している必要があります。特に、証券口座などでマイナンバーの入力を求められた際、海外居住者であることを伏せて実家の番号を入れると、後で大きなトラブルに発展します。
さらに、実家に郵便物が溜まり続けると、防犯上のリスクや家族への負担にもなります。不要なダイレクトメールなどは事前に停止し、本当に必要な通知だけが届くように整理しておきましょう。資産管理の効率化は、身の回りのアナログな情報の整理から始まります。
定期的な資金移動と日本円の必要額の見極め
海外生活が長くなると、日本円を使う機会は減りますが、ゼロにはなりません。日本のサブスクリプションサービスの支払い、帰国時の滞在費、あるいは日本の奨学金の返済など、日本円での支出が続く場合が多いからです。そのため、日本円をどれくらい残しておくか、どのタイミングで外貨を日本円に戻すかという計画が必要です。
20代のうちは資金に余裕がないことも多いため、数ヶ月分の支払いに必要な金額を日本の口座に残し、残りを現地へ送金するのが基本です。しかし、急激な円安が進むと、日本円での支払いが相対的に安くなり、逆なら高くなります。Wiseなどのサービスを使って、為替レートが良い時期にまとめて資金を移動させる「為替のタイミング」を意識しましょう。
また、長期間日本の口座を放置すると、休眠口座になってしまう恐れもあります。半年に一度はネットバンキングにログインし、少額の振り替えを行うなど、口座が「生きている」状態を維持するようにしてください。資産管理は、日々の小さなメンテナンスの積み重ねです。
海外移住を機に見直すべき民間保険の取捨選択
20代で日本で生命保険や医療保険に加入している方もいるでしょう。しかし、海外移住後は日本の民間保険の恩恵を受けにくいケースが多いです。例えば、入院給付金を受け取るために「日本語の診断書」が必要だったり、海外の病院での支払いが対象外だったりすることがあります。規約を読み込み、海外でも有効かどうかを確認してください。
もし海外での補償が手薄なら、高い保険料を払い続けるよりも、一旦解約してその分を現地の保険加入や投資に回すほうが合理的です。一方で、貯蓄型の保険(終身保険や養老保険など)を解約すると元本割れする可能性もあります。その場合は「払い済み保険」に変更して保険料の支払いを止め、運用だけを継続する方法もあります。
資産管理において保険は「万が一の備え」ですが、環境が変われば必要な備えも変わります。日本の保険に縛られすぎず、移住先の医療制度や治安に合わせて、最適な保障内容を再構築しましょう。20代の健康な時期だからこそ、リスクとコストのバランスをシビアに判断することが求められます。
帰国後の資産形成を見据えた長期的な出口戦略
最後に考えておきたいのが「いつか日本に帰るのか、それともずっと海外に住むのか」という出口戦略です。20代の今は決めるのが難しいかもしれませんが、どちらの可能性が高いかによって、資産の置き場所が変わります。もし3〜5年で帰国するつもりなら、日本の資産を無理に現地の通貨に替えすぎないほうが、為替リスクを抑えられます。
逆に永住の覚悟があるなら、日本の口座は最低限にし、現地の永住権取得やリタイアメントプランに全力を注ぐべきです。帰国する際には、現地の銀行口座を閉じる手続きや、積み立てていた年金をどう持ち出すかといった逆の手順が必要になります。この「逆・海外移住の資産管理」も想定に入れておくのが、真のプロフェッショナルな視点です。
人生は予定通りにいかないことも多いですが、資産管理の軸を「どこに住んでいても価値が変わらないグローバル資産」に置いておけば、どのような変化にも柔軟に対応できます。20代の多感な時期に海外を経験し、同時にお金と真剣に向き合うことは、あなたの人生において何物にも代えがたい財産となるはずです。
| 項目 | 出発前のToDo | 移住直後のToDo |
|---|---|---|
| 銀行口座 | 非居住者サービスへの申し込み | 現地口座の開設・給与受取設定 |
| 証券・NISA | 継続利用の可否確認、必要なら売却 | 現地の優遇税制口座の開設 |
| 送金準備 | Wiseなどのアカウント作成 | 必要額の送金と為替レートチェック |
| 税金・年金 | 海外転出届の提出、納税管理人の選任 | 現地の納税者番号(TIN)取得 |
20代の海外移住に向けた資産管理のポイントまとめ
20代の海外移住における資産管理は、単にお金を整理するだけでなく、将来の自分に向けた「グローバルな基盤作り」そのものです。日本を出発する前に、まず銀行や証券口座が非居住者として維持できるかを確認し、NISAなどの非課税枠についてもルールに基づいた判断を行うことが不可欠です。これをおろそかにすると、後々の税務トラブルや資産凍結のリスクを招くことになります。
移住後は、現地の銀行口座やWiseのような便利な送金サービスをフル活用し、生活コストを最適化させましょう。さらに、日本円だけに頼らず、全世界株式や現地の優遇投資制度を利用して外貨での資産形成を進めることが、為替リスクから身を守り、効率的に資産を増やす鍵となります。20代という時間を味方につけ、複利の力を最大限に利用してください。
税務面では、日本と居住国の二重課税を防ぐための租税条約の理解や、適切な住所変更手続きが欠かせません。クリーンな資産管理を継続することが、海外での信用を守り、自由なキャリア選択を支える土台となります。この記事で紹介したステップを一つずつ実践し、不安のない状態で新しい世界への挑戦を楽しんでください。



