将来のために資産運用を始めようと考えている20代の方にとって、最初にして最大の悩みどころが「S&P500」と「オールカントリー(通称:オルカン)」のどちらを選ぶかという問題ではないでしょうか。どちらも新NISAで非常に人気のある投資先ですが、特徴が異なるため、自分のライフプランや考え方に合った方を選ぶことが大切です。
20代は運用期間を長く確保できるという、投資において最も有利な武器を持っています。この時期に正しい知識を身につけて投資を開始すれば、数十年後には複利の効果で大きな資産を築ける可能性が高まります。どちらが自分に向いているのか、それぞれのメリットや注意点を詳しく見ていきましょう。
この記事では、S&P500とオールカントリーの基本的な仕組みから、20代という年齢層に特化した判断基準、そして失敗しないための運用のコツまで、投資初心者の方にも分かりやすく丁寧に解説していきます。資産運用の第一歩を自信を持って踏み出せるよう、ぜひ参考にしてください。
1. S&P500とオールカントリーどっちを選ぶ?20代の投資初心者が直面する悩み

投資を始めようとSNSやYouTubeで情報を集めると、必ずと言っていいほどこの2つの指数が登場します。米国経済の成長を信じて一点突破するのか、それとも世界中に分散してリスクを抑えるのか、迷ってしまうのは当然のことです。
米国一択か世界分散かという究極の選択
S&P500は米国の代表的な企業500社に投資する指数であり、これまでの歴史の中で非常に優れたパフォーマンスを出し続けてきました。一方で、オールカントリー(全世界株式)は米国を含む先進国や新興国の株式にまるごと投資するスタイルです。これらは「集中か分散か」という、投資の基本的な考え方の違いを象徴しています。
20代の方が悩む大きな理由は、どちらも「正解」に見えるからでしょう。実際に、どちらの指数も長期で保有すればプラスのリターンが期待できる優良な投資先です。しかし、米国株が好調な時期が長く続いたことで、「米国だけで十分」という意見と「将来の勢力図は変わるかもしれない」という意見が対立し、初心者を惑わせています。
まずは、どちらが良い・悪いという二元論ではなく、自分の性格や将来のビジョンにどちらがフィットするかを考えることが重要です。それぞれの投資対象がどのような中身で構成されているのかを正しく理解することから始めましょう。
20代という若さが持つ最大の武器は「時間」
資産運用において、20代という年齢はそれだけで大きなアドバンテージです。なぜなら、運用期間が長ければ長いほど、利益がさらに利益を生む「複利(ふくり)」の効果が爆発的に高まるからです。複利とは、運用で得た収益を再び投資に回すことで、雪だるま式に資産が増えていく仕組みのことです。
例えば、20代から60代まで40年間の運用ができれば、たとえ少額の積み立てであっても、最終的な資産額は驚くほど大きくなります。この「時間の長さ」があるからこそ、一時的な市場の暴落も乗り越えることができますし、少々のリスクを取ることも可能になるのです。
投資の選択肢を考える際には、目先の1〜2年の値動きに一喜一憂するのではなく、20年、30年先を見据えた視点を持つことが欠かせません。この長いスパンで見れば、S&P500もオールカントリーも、あなたの資産を大きく育てるための強力なパートナーになってくれるはずです。
結局のところどちらを選んでも正解に近い
結論から言えば、S&P500とオールカントリーのどちらを選んでも、資産運用のスタートとしては「大正解」です。世の中にはリスクが高すぎるギャンブルのような投資商品も溢れていますが、この2つはプロの投資家からも信頼されている王道の選択肢だからです。
大切なのは「どっちにしようか」と悩み続けて、投資を始める時期が遅れてしまうことです。20代にとって最大の損失は、投資をしないことで「複利の期間」を無駄にしてしまうことと言っても過言ではありません。どちらにしようか迷って動けなくなるくらいなら、まずは少額からでもどちらか一歩を踏み出すことが大切です。
もちろん、途中で投資先を変更することも可能ですし、両方を組み合わせて持つという選択肢もあります。まずはそれぞれの特徴を深く知り、自分が納得できる方を選びましょう。納得感を持って投資を始めることで、相場が悪い時でも途中で投げ出さずに継続できる強さが身につきます。
2. 米国経済の成長に賭ける「S&P500」の特徴とメリット

S&P500は、米国を代表する主要な500社の株価で構成される時価総額加重平均型の株価指数です。簡単に言うと、米国の時価総額(企業の価値)が大きい順にバランスを整えてパック詰めした商品のようなものです。世界中の投資家がベンチマーク(指標)として注目しています。
世界最強の経済大国である米国を支える500社
S&P500に投資するということは、米国の超優良企業500社の株主になるということと同義です。構成銘柄には、Apple、Microsoft、Amazon、Alphabet(Googleの親会社)、Meta(Facebook)、NVIDIAといった、私たちが日常的に利用しているIT大手がずらりと並んでいます。
これらの企業は米国市場だけでなく、全世界でビジネスを展開して利益を上げています。そのため、米国だけに投資しているようでいて、実は間接的に世界経済の成長の恩恵を受けているとも言えます。米国経済が今後も世界の中心であり続けると考える人にとって、これほど魅力的な投資先はありません。
また、S&P500は定期的に銘柄の入れ替えが行われます。業績が悪化した企業は除外され、新たに勢いのある企業が採用されるため、常に「米国の選りすぐりの500社」が維持される仕組みになっています。この自浄作用があることも、長期投資において安心材料となります。
過去の実績に見る圧倒的なリターン率
S&P500の最大の魅力は、その輝かしい過去の実績です。過去数十年間のデータを見ると、年平均で約7〜10%程度のリターンを叩き出しており、これは他の多くの市場を凌駕する数字です。特にここ10年ほどは米国株の独り勝ち状態が続いており、資産を大きく増やした投資家が続出しました。
もちろん、リーマンショックやコロナショックのような大きな暴落もありましたが、米国経済はその度に力強く回復し、最高値を更新し続けてきました。この「過去の右肩上がりの実績」を信じるのであれば、S&P500は非常に効率的な投資先と言えるでしょう。
20代であれば、仮に大きな暴落が来たとしても、その後に回復を待つ時間が十分にあります。リスクを取って高いリターンを目指したいというアクティブな志向の方には、S&P500が選ばれる傾向が強いです。効率よく資産を増やせる可能性を秘めているのが米国の強みです。
20代がS&P500を選ぶ際の注意点とリスク
メリットが強調されがちなS&P500ですが、いくつか注意点もあります。最も大きなリスクは「米国一国に集中投資している」という事実です。どれだけ米国が強くても、将来的に米国の覇権が揺らいだり、長期的な経済停滞に陥ったりする可能性はゼロではありません。
また、S&P500はオールカントリーに比べて値動き(ボラティリティ)が激しくなりやすい傾向があります。好調な時は良いですが、下落する時はオールカントリーよりも大きく下がる場面も想定されます。その際に、「米国株だけで大丈夫かな」と不安にならずに持ち続けられるかどうかが試されます。
さらに、為替リスクの影響も受けます。米ドル建ての資産であるため、円高が進んだ場合には日本円ベースでの資産額が目減りします。20代のうちは元本が少ないため大きな影響はありませんが、将来的に資産額が大きくなった時には、この為替の変動も無視できない要素になります。
S&P500の主な特徴
・米国を代表する500社で構成されている
・GAFAMなどの巨大IT企業の比率が高い
・過去のリターンが非常に優秀である
・定期的な入れ替えにより、常に優良企業が維持される
・米国経済の低迷時には大きな影響を受ける
3. 世界全体に投資する「オールカントリー(オルカン)」の強み

オールカントリー(全世界株式)は、その名の通り日本を含む先進国、そして新興国の計47カ国程度の株式を対象とした指数です。特定の国がダメになっても他がカバーするという、究極の分散投資を実現できるのが最大の特徴です。
1本で世界中の株式に分散投資できる安心感
投資の格言に「卵を一つのカゴに盛るな」という言葉があります。これは、一つのカゴを落とすと全ての卵が割れてしまうため、複数のカゴに分けてリスクを分散すべきだという教えです。オールカントリーはこの教えを最も忠実に体現した投資商品と言えます。
現在の構成比率を見ると、米国が約60%を占めていますが、残りの約40%には日本、イギリス、フランス、カナダ、あるいはインドや台湾といった新興国も含まれています。将来もし米国に代わって他の国が台頭してきたとしても、その国の成長を自動的に取り込めるのがオールカントリーの凄さです。
20代の方がこれから40年近く投資を続けていく中で、世界の中心がどこにあるかは予測不可能です。そんな「未来のことは誰にもわからない」という前提に立ち、どこが成長しても恩恵を受けられるようにしておくスタイルは、非常に合理的で賢い戦略だと言えます。
カントリーリスクを最小限に抑える仕組み
特定の国に投資が集中していると、その国の政治不安や自然災害、法規制の変更などが資産に直撃する「カントリーリスク」にさらされます。オールカントリーはこのリスクを地理的に分散させることで、投資全体へのダメージを最小限に抑える工夫がなされています。
例えば、米国のハイテク産業に規制が入って米国株が大きく売られたとしても、欧州やアジアの株価が堅調であれば、全体の資産の減り方はマイルドになります。この「負けないための工夫」が、投資を長く続けるための精神的な支えになることも多いのです。
もちろん、世界同時株安のような場面では全ての国が一緒に下がってしまいますが、特定の国が一人負けするようなシナリオにおいては、オールカントリーの方が圧倒的に防御力が高くなります。長く穏やかに運用を続けたいと考える20代の方には、この安定感が大きなメリットになります。
運用コスト(信託報酬)が極めて低いという魅力
現在、日本で人気のオールカントリー型の投資信託(例えば「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」など)は、信託報酬と呼ばれる運用コストが極めて低く設定されています。信託報酬とは、投資信託を保有している間に私たちが支払い続ける手数料のことです。
わずか年率0.05%台といった驚異的な低コストで世界中に投資できるのは、現代の投資家にとって大きな恩恵です。コストは確実なマイナスリターンになるため、これが低ければ低いほど、将来私たちが手にする利益は増えることになります。
S&P500の投資信託も同様に低コストですが、世界全体に分散しながらここまでの低コストを実現しているオールカントリーのコストパフォーマンスは異常なほど優れています。特に運用期間が長くなる20代にとっては、このわずかな手数料の差が数十年の積み重ねで大きな金額差となって現れます。
オールカントリーの構成比率は時価総額に合わせて自動でリバランス(調整)されます。例えば、今後インドの経済規模が大きくなれば、私たちが何もしなくても投資信託の中でインド株の比率を高めてくれます。まさに「ほったらかし投資」の最高峰です。
4. 20代の投資スタイルに合わせたシミュレーションと判断基準

S&P500とオールカントリーの違いを理解したところで、次は「自分ならどっちを選ぶべきか」を具体的にシミュレーションしてみましょう。20代の投資スタイルは、性格やライフプラン、リスクに対する考え方によって人それぞれ異なります。
リスクを取って大きなリターンを狙いたい場合
「自分は多少の値動きには動じない」「20代のうちは攻めの姿勢で、少しでも多くの資産を築きたい」と考えるなら、S&P500が第一候補になります。米国のイノベーション力は今もなお世界トップであり、AI技術などの次世代産業においても米国企業が主導権を握っています。
歴史的に見れば、米国株は世界株平均を上回るリターンを出してきた期間が長いです。もし今後も米国が世界をリードし続けると信じるのであれば、S&P500に集中させることで、オールカントリーよりも高いリターンを得られる可能性が高まります。
ただし、その分だけ下落時の振れ幅も大きいことを覚悟しなければなりません。1年で資産が30%以上減少することもありますが、その時に「バーゲンセールだ」と思って買い増しできるような強気な性格の方には、S&P500は非常に相性の良い投資先となるでしょう。
安定性を重視して世界経済の成長に乗りたい場合
「あまり大きな損はしたくない」「安心して眠れる投資をしたい」という方、あるいは「米国だけでなく他の国にもチャンスがあると思う」という方は、オールカントリーがおすすめです。分散が効いている分、S&P500よりもマイルドな値動きになりやすく、精神的な負担が少なくて済みます。
投資で最もやってはいけないことは、暴落に耐えきれなくなって途中で売却してしまうことです。20代から始めて60代まで続けるためには、何よりも「続けやすさ」が重要です。オールカントリーの「世界全体が成長すれば自分も儲かる」という考え方は、非常に納得感があり、継続しやすいのが特徴です。
爆発的なリターンは期待できないかもしれませんが、世界全体の経済成長(GDPの伸び)に連動した安定的な収益が期待できます。堅実に、コツコツと平均点を取り続けたいという優等生タイプの投資を目指すなら、オールカントリーは最良の選択肢になります。
S&P500とオルカンを「両方持つ」のはアリか?
よくある質問に「どっちか選べないから、半分ずつ買うのはどうですか?」というものがあります。結論から言うと、これは全く問題ありません。実際に多くの投資家が両方を保有しています。ただし、1つ知っておくべきことは「中身がかなり重複している」ということです。
前述の通り、オールカントリーの約60%は米国株であり、その大部分はS&P500に含まれる企業です。つまり、両方を半分ずつ買うということは、「米国株への比率を高めた全世界投資」をしていることになります。これは投資の世界では「米国株のオーバーウェイト(多めに持つこと)」と呼ばれます。
これを理解した上で持つのであれば、非常に理にかなった戦略です。「ベースは世界分散で守りつつ、成長の核となる米国株に少しアクセントをつける」という持ち方です。どちらか一極に絞るのが不安な20代の方は、こうしたハイブリッドな持ち方からスタートするのも良いでしょう。
| 項目 | S&P500 | オールカントリー |
|---|---|---|
| 投資対象 | 米国の主要500社 | 全世界の約2,800社 |
| リスク(値動き) | やや高い | 相対的に低い |
| 期待リターン | 高い実績がある | 世界平均の成長 |
| 分散の範囲 | 米国一国(集中) | 全世界(広域分散) |
| 向いている人 | 上昇を期待する攻めの人 | 安定を好む守りの人 |
5. 新NISAを賢く活用して資産を最大化するポイント

2024年から始まった新NISAは、20代の資産形成にとってこの上ない追い風です。売却益や配当金に税金がかからないこの制度を使い倒すことが、S&P500やオールカントリーで成功するための鍵となります。ここでは、具体的な活用のコツをお伝えします。
つみたて投資枠での長期保有が鉄則
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」がありますが、20代の基本戦略はつみたて投資枠での定期定額購入です。毎月決まった金額を淡々と買い続ける「ドル・コスト平均法」を利用することで、価格が高い時には少なく、安い時には多く買うことができ、平均購入単価を抑えることができます。
S&P500もオールカントリーも、短期的には価格が上下しますが、15年、20年といった長期で保有すれば、プラスのリターンに収束する可能性が歴史的に非常に高いことが証明されています。途中で価格が下がったからといって積立を止めるのではなく、むしろ安く買えるチャンスだと捉える余裕が大切です。
新NISAは非課税期間が無期限化されたため、20代から始めれば40年以上も非課税の恩恵を受けることができます。このメリットを最大限に活かすためには、とにかく「早く始めて、長く持ち続けること」に尽きます。銘柄選びも重要ですが、この「継続」こそが最も資産を増やす要因となります。
暴落時に焦って売らないためのメンタル維持術
投資を始めると、必ず一度や二度は「資産が数日で数十万円減った」という場面に遭遇します。特に20代の方は初めての経験になるため、パニックになって売ってしまう「狼狽売り(ろうばいうり)」をしてしまいがちです。しかし、これが資産形成における最大の失敗パターンです。
暴落時に売らないためのコツは、投資信託の評価額(マイナスの数字)を毎日チェックしすぎないことです。自動積立に設定したら、普段はその存在を忘れているくらいがちょうど良いと言われます。投資は「気絶している間が一番増える」という冗談があるほど、何もしないことが最善の策になる場合が多いのです。
もし不安になったら、過去の株価チャートを眺めてみてください。ITバブル崩壊も、リーマンショックも、コロナショックも、どんなに深い谷もその後には必ず新しい山ができています。20代のあなたには、その回復を待つための圧倒的な時間が残されていることを思い出しましょう。
ポイント還元や証券会社の選び方も重要
銘柄選びと同じくらい大切なのが、どの証券会社で投資を始めるかです。20代なら、迷わずSBI証券や楽天証券といった大手ネット証券を選びましょう。これらの証券会社は手数料が無料なだけでなく、クレカ積立によるポイント還元が非常に充実しています。
例えば、毎月5万円をクレジットカードで積み立てるだけで、毎月数百円分のポイントが貯まります。これは実質的なリターンの底上げになります。数十年単位で見れば、このポイントの差だけでも数万〜数十万円の差になって現れます。賢く仕組みを利用することも、現代の投資術の一部です。
また、UI(使い勝手)が良いアプリを提供している証券会社を選ぶと、設定の変更や状況の確認がスムーズです。20代はデジタルネイティブな世代ですので、スマホ一つで完結できる利便性は、投資を習慣化する上で大きな助けになるはずです。
20代の投資はS&P500とオールカントリーどっちでも継続が最優先
20代の方がS&P500とオールカントリーのどちらを選んでも、それは将来に向けた素晴らしい一歩です。米国経済の圧倒的な成長力に期待するならS&P500、世界全体の成長に広く分散してリスクを抑えたいならオールカントリーという選択になります。
過去の実績ではS&P500が勝っていますが、未来のことは誰にもわかりません。そのため、より守りを固めたい初心者はオールカントリーから始めるのが無難ですし、リターンを追求したい若さはS&P500を選ぶ理由になります。どちらを選んでも、新NISAという非課税制度を活用し、低コストな優良投資信託を選ぶという基本は変わりません。
最も大切なことは、選んだ銘柄を信じて、暴落時もコツコツと積立を継続することです。20代という若さを活かして複利の力を味方につければ、数十年後には今の悩みも懐かしい思い出に変わるはずです。まずは少額からでも良いので、今日からあなたの資産運用の物語を始めてみましょう。
もしどうしても決められないのであれば、まずはオールカントリーを選んで、投資に慣れてきたらS&P500を少しずつ買い足していくという方法もあります。資産運用は一生続くものです。完璧を求めすぎず、柔軟な姿勢で市場と向き合っていきましょう。


