資産運用を始めようと証券口座を開設する際、多くの人が最初に悩むのが「特定口座の源泉徴収をありにするか、なしにするか」という選択です。特に20代の方は、学生や社会人など立場もさまざまで、どちらを選べば将来的な手間や税金面で得をするのか判断が難しいですよね。
この記事では、特定口座の源泉徴収あり・なしの違いを、20代のライフスタイルに合わせて分かりやすく解説します。税金の仕組みは一見複雑ですが、ポイントを押さえれば自分に最適な選択ができます。自分にとって損のない口座設定を見つけて、スムーズな資産運用のスタートを切りましょう。
特定口座の「源泉徴収あり・なし」の違いと20代が知っておくべき基本

資産運用を始める際、まず「特定口座」がどのようなものかを理解しておく必要があります。特定口座とは、証券会社が投資家に代わって1年間の売買損益を計算してくれる便利な口座のことです。これに対し、自分ですべて計算する「一般口座」もありますが、初心者は特定口座を選ぶのが一般的です。
この特定口座の中で、さらに「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」のどちらかを選択することになります。この選択によって、投資で得た利益に対する税金の支払い方法が大きく変わるため、自分の状況に合わせた設定が重要になります。
特定口座(源泉徴収あり)の仕組みと特徴
「源泉徴収あり」を選択すると、株や投資信託を売却して利益が出た際、証券会社が自動的に約20%の税金を差し引いて国に納めてくれます。つまり、自分で確定申告を行う必要が原則としてなくなるのが最大の特徴です。
20代の忙しい会社員や、税金の知識があまりない学生の方にとって、手間を最小限に抑えられるこの仕組みは非常に魅力的です。利益が出たその場で納税が完了するため、後から税金を支払うために資金を残しておく必要もありません。
ただし、利益から即座に税金が引かれるため、その分だけ再投資に回せる資金がわずかに減るという側面もあります。とはいえ、事務作業の負担を極限まで減らしたいのであれば、この「あり」を選ぶのが王道と言えるでしょう。
特定口座(源泉徴収なし)の仕組みと特徴
「源泉徴収なし」を選択した場合、証券会社は年間取引報告書という計算書は作成してくれますが、税金の差し引きまでは行いません。そのため、利益が出た場合は自分で確定申告を行い、税金を納める必要があります。
この仕組みのメリットは、納税を翌年の確定申告時期まで先延ばしにできる点です。手元に残る資金を運用に回し続けることができるため、資金効率を少しでも高めたいと考える投資家に好まれます。
しかし、確定申告の手間が発生するだけでなく、後述する「扶養(ふよう)」の問題など、20代の方にとって見過ごせない注意点がいくつか存在します。安易に「なし」を選んでしまうと、思わぬ手続きに追われる可能性があることを覚えておきましょう。
20代が把握しておくべき「税金と申告」の関係
投資で得た利益には、通常20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税金がかかります。通常、所得がある人は確定申告が必要ですが、日本の税制には「給与所得以外の所得が年間20万円以下なら確定申告不要」というルールがあります。
「源泉徴収なし」を選んだ場合、この20万円ルールを活用して所得税の納税を免除されるケースがあります。しかし、住民税についてはこのルールが適用されないため、別途市区町村への申告が必要になるなど、仕組みが少し複雑です。
20代は転職や結婚、副業の開始など環境の変化が多い時期でもあります。自分の今の年収や今後の予定を考慮し、どの程度の手間を許容できるかを考えることが、口座選びの第一歩となります。
特定口座の基本まとめ
・特定口座は証券会社が損益計算をしてくれる口座
・「あり」は納税が自動。確定申告の手間がゼロになる
・「なし」は自分で納税。資金効率は良いが手続きが必要
源泉徴収「あり」を選ぶメリット・デメリット

多くの20代投資家が選んでいるのが「源泉徴収あり」の設定です。特に入門者にとっては、複雑な計算や役所での手続きを回避できるメリットは非常に大きいと言えます。しかし、すべての人にとって完璧な選択肢というわけではありません。
ここでは、「源泉徴収あり」を選んだ場合にどのような恩恵が受けられるのか、そして逆にどのような場面で不利になる可能性があるのかを深掘りしていきます。自分の性格やライフスタイルに照らし合わせて考えてみてください。
メリット:確定申告の手間を完全に排除できる
最大のメリットは、何と言っても「確定申告という重労働から解放されること」です。初めて資産運用を行う20代にとって、確定申告書の作成は非常にハードルが高く、時間もかかります。
源泉徴収ありの口座であれば、利益が出るたびに税金が自動計算され、精算が完了します。書類の管理や提出期限を気にする必要がなく、仕事やプライベートに集中できるのは大きな強みです。忙しい社会人一年目の方や、学業に専念したい学生の方には最適な選択です。
また、確定申告をしないことで、投資の利益が「合計所得金額」に含まれないという性質があります。これにより、健康保険料の金額に影響を与えなかったり、後述する扶養控除の条件に影響しなかったりする副次的なメリットも享受できます。
メリット:家族や勤務先に投資の利益を知られない
20代の中には、親の扶養に入っていたり、勤務先にあまり投資の状況を知られたくないという方もいるでしょう。源泉徴収ありの口座で取引を完結させれば、その所得は確定申告に現れないため、プライバシーを守ることができます。
もし「なし」を選んで確定申告を行うと、住民税の納付書が自宅や勤務先に届く過程で、給与以外の所得があることが判明する場合があります。副業禁止の会社で投資が副業と見なされることは稀ですが、余計な心配をせずに済むのは「あり」の利点です。
特に親の健康保険の扶養に入っている学生の場合、投資で大きな利益が出ても「源泉徴収あり」であれば、扶養から外れる心配がありません。家族に迷惑をかけたくないという心理的な安心感も得られるでしょう。
デメリット:少額の利益でも税金が引かれてしまう
一方でデメリットもあります。本来であれば「年間利益が20万円以下」など、確定申告が不要なケースでも、「あり」を選択していると強制的に税金が差し引かれます。
例えば、年間で5万円の利益が出た場合、源泉徴収なしであれば(他の所得要件を満たせば)所得税を払わずに済む可能性がありますが、ありの場合は約1万円の税金が自動で引かれます。これは少額投資を行う初心者にとって、相対的に大きなコストと感じるかもしれません。
引かれた税金は確定申告をすれば取り戻せる場合もありますが、そもそも手間を省くために「あり」にしているのに、還付のために申告をするのは本末転倒です。投資額が小さいうちは、この「本来払わなくてよかった税金」の支払いがデメリットとして意識されます。
源泉徴収「なし」を選ぶメリット・デメリット

「源泉徴収なし」の設定は、少し手間をかけてでも利益を最大化したい、あるいは制度の仕組みを理解して賢く立ち回りたいと考える20代に適しています。しかし、その裏には自己責任で行うべきタスクが多く潜んでいます。
このセクションでは、「なし」を選んだ場合に得られる金銭的なメリットと、逆にどのようなトラブルや手間が発生しうるのかを詳しく見ていきましょう。特に「知らなかった」では済まされない扶養の問題については注意が必要です。
メリット:利益を100%運用に回せる期間が長くなる
「源泉徴収なし」の最大の魅力は、利益が出てもその場では税金が引かれないことです。例えば10万円の利益が出たとき、「あり」なら約2万円が即座に引かれますが、「なし」なら10万円をそのまま次の投資に回せます。
これを繰り返すことで、複利の効果をより高めることが可能になります。最終的には確定申告で納税することになりますが、それまでの数ヶ月から1年の間、本来税金として消えるはずだったお金を運用し続けられるのは大きなアドバンテージです。
特に運用資金が限られている20代にとって、再投資の効率を上げることは資産形成のスピードを速める助けになります。少しでも効率を重視したい「理論派」の投資家にとっては魅力的な選択肢と言えるでしょう。
メリット:年間の利益が少ない場合に節税できる
給与所得がある会社員の場合、投資の利益を含む「副次的な所得」が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告が不要になる特例があります。源泉徴収なしを選んでいれば、利益が20万円以下に収まった年は、所得税を1円も払わずに済みます。
これにより、本来引かれるはずだった15.315%分の所得税を合法的に手元に残すことができます。年間数万円程度の利益を目指す少額投資家にとっては、この節税効果は無視できないメリットとなります。
ただし、住民税にはこの「20万円ルール」が存在しない点には注意が必要です。所得税の申告が不要でも、別途お住まいの市区町村へ住民税の申告を行う必要があるため、完全な「手続きゼロ」にはならないことを覚悟しておかなければなりません。
デメリット:扶養から外れるリスクがある
20代の学生や、年収を抑えて親や配偶者の扶養に入っている方にとって、「なし」の選択は非常に危険な場合があります。確定申告を行うことでその利益が「所得」としてカウントされるため、扶養控除の対象外になってしまう恐れがあるからです。
もし投資で大きな利益を出し、確定申告を行うと、本人の所得が増えたと見なされます。その結果、親の税金が高くなったり、自身の健康保険料の支払い義務が生じたりして、家族全体で見ると大きなマイナスになるケースがあります。
「源泉徴収あり」であれば、どれだけ稼いでも申告しなければ扶養に影響しません。自分の今の立場が「誰かに養われている状態」であるなら、目先のわずかな節税効果よりも、扶養を守る安定性を優先する方が賢明です。
投資を始めたばかりの頃は、予想外に利益が出てしまうこともあります。扶養に入っている学生の方は、特別な理由がない限り「源泉徴収あり」にしておくのが最も安全な選択です。
20代のライフスタイルに合わせた賢い選択基準

ここまで「あり」と「なし」の特徴を見てきましたが、結局どちらを選ぶべきかは、あなたの現在の状況によって決まります。20代は、学生、新社会人、ある程度キャリアを積んだ社会人など、人によって立場が大きく異なるからです。
ここでは、代表的な3つのパターンを例に挙げて、どちらの口座を選ぶのが最も合理的かをご紹介します。自分に近いケースを確認して、選択の参考にしてみてください。
学生やフリーターで親の扶養に入っている場合
親の扶養に入っている20代の方は、迷わず「源泉徴収あり」を選んでください。理由は前述の通り、扶養から外れるリスクを完全に排除するためです。
アルバイト代と投資の利益を合算して一定額を超えてしまうと、親が受けている扶養控除が消滅し、親の所得税や住民税が跳ね上がってしまいます。これは家族関係において大きなトラブルの元になりかねません。
「あり」を選んでおけば、投資での利益がどれだけ増えても、それは親の税計算には一切影響しません。自分の資産を増やしながら、親に迷惑をかける心配もない。学生投資家にとってこれほど安心な設定はありません。
忙しく働く会社員で手間をかけたくない場合
平日は仕事に追われ、週末は趣味や休息に充てたいという一般的な会社員の方も、「源泉徴収あり」がおすすめです。20代は仕事のスキルアップや人脈作りに時間を使うべき貴重な時期です。
慣れない確定申告の準備に数日を費やすよりも、その時間を勉強や遊びに使う方が、中長期的には大きな価値を生むはずです。また、ふるさと納税を行っている場合、「あり」の設定ならワンストップ特例制度をそのまま利用できるという利点もあります。
投資の利益が年間20万円を超えるかどうかの瀬戸際であっても、その差額のために頭を悩ませるのは効率的とは言えません。「投資は自動で行うもの」と割り切り、事務作業も証券会社に任せてしまいましょう。
副業や複数の収入源があり確定申告に慣れている場合
既にフリーランスとして活動していたり、副業で毎年確定申告を行っていたりする方の場合は、「源泉徴収なし」を検討する余地があります。どのみち確定申告をするのであれば、投資の利益をまとめる手間はそれほど増えません。
むしろ、他の事業で赤字が出ている場合などは、投資の利益と損益通算(利益と損失を相殺すること)をすることで、全体の税金を抑えられる可能性があります。確定申告の仕組みを理解していることは、投資戦略の幅を広げる武器になります。
ただし、この場合も「住民税の申告」を忘れないようにしなければなりません。節税メリットと申告の手間を天秤にかけて、自分にとって納得のいく方を選びましょう。慣れている人ほど、制度の隙間を上手く活用できるはずです。
| 現在の状況 | 推奨される口座設定 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 学生(扶養内) | 源泉徴収あり | 扶養外れを確実に防ぐため |
| 会社員(一般) | 源泉徴収あり | 手間を省き本業に集中するため |
| 副業家・フリーランス | 源泉徴収なし | 損益通算や資金効率を優先するため |
| 少額投資の初心者 | 源泉徴収あり | まずは仕組みに慣れることを優先 |
確定申告が必要になるケースと具体的な手順

「源泉徴収あり」を選んでいても、場合によってはあえて確定申告をした方が得になるケースがあります。逆に「なし」を選んだ方は、利益が出れば必ず申告を行わなければなりません。いざという時に慌てないよう、申告が必要な代表的な例を知っておきましょう。
確定申告と聞くと難しいイメージがありますが、最近はスマートフォンのアプリやe-Tax(電子申告)を使って、自宅から簡単に手続きができるようになっています。ここでは20代が遭遇しやすい3つのシナリオを解説します。
複数の証券会社で損益が発生したとき
例えばA証券で10万円の利益が出て、B証券で5万円の損失が出たとします。それぞれの口座が「源泉徴収あり」だと、A証券では利益に対して税金が引かれていますが、B証券の損失は考慮されていません。
この場合、確定申告を行うことで「損益通算」ができます。Aの利益とBの損失を合わせると、全体の利益は5万円になります。すでにA証券で10万円分払っていた税金のうち、払いすぎた分を還付金として受け取ることができるのです。
最近は複数の証券口座を使い分ける20代も増えています。もし、ある口座で大きく負けてしまった年は、別の口座の利益と相殺できないかを確認してみるのが賢明な判断です。
その年の損失を翌年以降に繰り越したいとき
投資を始めたばかりの年は、知識不足や相場の急変でマイナスになってしまうこともあるでしょう。その損失は、確定申告をすることで最大3年間繰り越すことが可能です。これを「譲渡損失の繰越控除」と呼びます。
例えば今年10万円の損失を出し、翌年10万円の利益が出た場合、繰り越しをしておけば翌年の利益に対する税金がゼロになります。この手続きは「源泉徴収あり・なし」にかかわらず、自分で申告を行わなければ適用されません。
20代は運用期間が長いため、たとえ今の資産がマイナスでも、将来の利益にかかる税金を減らす「種まき」として、損失が出た年こそ申告を行う価値があると言えるでしょう。
具体的な確定申告の手順と必要なもの
確定申告を行う時期は、原則として利益が出た翌年の2月16日から3月15日までです。準備するものは、証券会社から電子交付される「特定口座年間取引報告書」と、マイナンバーカードがあれば十分です。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、画面の指示に従って数値を入力していきます。特定口座年間取引報告書の内容をそのまま写すだけなので、パズルのような感覚で進めることができます。
完了後はe-Taxで送信すれば、税務署に行く必要もありません。一度経験してしまえば、翌年からはさらにスムーズに作業できるようになります。将来的に大きな資産を築いたときのために、20代のうちに予行練習をしておくのも一つの考え方です。
特定口座の源泉徴収あり・なしに関するまとめ
資産運用を始める20代にとって、特定口座の「源泉徴収あり・なし」の選択は、その後の投資生活の快適さを左右する重要な分岐点です。最後に、今回の内容をおさらいして、あなたが進むべき道を確認しましょう。
まず、「迷ったら源泉徴収あり」を選んでおけば間違いありません。特に学生や新社会人のうちは、確定申告の手間を省き、扶養の問題をクリアにできるメリットが極めて大きいからです。投資で最も大切なのは「長く続けること」であり、手続きの煩わしさで挫折してしまうのは最も避けるべき事態です。
一方で、資金効率を究極まで高めたい場合や、少額の利益における所得税免除を狙いたい場合は「なし」という選択肢もあります。ただし、その場合は住民税の申告や、将来的な扶養外れのリスクを正しく理解し、自分で管理する覚悟が必要です。
もし運用を続けていく中で、状況が変わったとしても安心してください。特定口座の「あり・なし」の設定は、その年の最初の売却(配当の受け取り)が行われる前であれば、後から変更することも可能です。まずは「あり」でスタートして、投資に慣れてから再検討するという柔軟なスタンスで良いのです。
20代という若さは、資産運用において最大の武器である「時間」を味方にできる最高の特権を持っています。口座設定という最初の壁を賢く乗り越えて、着実な資産形成の一歩を踏み出しましょう。あなたの将来を豊かにするための投資が、スムーズに始まることを応援しています。



